後遺症(後遺障害)

後遺症全般

Q 後遺症が残った場合、どのようにすればいいですか。

A 主治医に「後遺障害診断書」を作成してもらってください。交通事故の相手方に任意保険会社がついている場合、任意保険会社を通じて後遺傷害等級認定の手続をとってもらうことができます。これを事前認定と呼びます。
任意保険会社がついていない場合は、相手方の自賠責保険会社に連絡して後遺障害等級認定の手続を受けたい旨を伝えて、手続をしてください。

Q なぜ後遺障害等級の認定が必要になるのですか。

A 後遺障害等級が認められないと、事故の相手方側の任意保険会社が、少なくとも、任意に賠償に応じてくれることは難しいと思います。また、後遺障害等級によって、損害額が変わります。

訴訟を提起する場合でも、後遺障害等級が認定されていれば、事前に被害者請求で自賠責保険から回収可能ですし、損害認定は最終的には裁判所が行うとはいえ、後遺障害等級が認定されていることは、訴訟上、かなり重要な事実と証拠となります。

Q 後遺障害等級が認められないこともありますか。

A あります。特に、頚椎捻挫で、痛み等の神経症状につき他覚的所見がない場合には、認められない(非該当)ことがよくあります。

Q 後遺障害等級が認められない場合(非該当と判定された場合)には、どうしたらいいですか。

A 納得がいかない場合には、異議申立をすることができます。

Q 異議申立をすれば、後遺障害等級を認めてもらえますか。

A 単に異議申立てをしただけで、認められるとは限りません。有効かつ適切な異議理由を主張し、証拠を提出するなどして、後遺障害等級を認定してもらえるようにする必要があります。

Q いわゆる、むち打ち症で後遺障害等級が非該当になった場合には、後遺障害等級を認めてもらうことが難しいのでしょうか。

A 診断名としては、むち打ち症というよりも、頸椎捻挫などの傷病名がついていると思います。異議申立をしても認められるとは限りませんが、弁護士が代理人として就任した際には、依頼者様からお話を伺い、医学的な資料なども含めて収集し、主張立証をしていきます。その結果、例えば14級9号(局部に神経症状を残すもの)として認定され、覆ることもあります。

Q 異議申立は、被害者自身でもできますか。

A 手続をとることはできますが、十分な準備なく異議申立手続をしても、同じ結果になるかもしれません。医療記録の取り付けや分析、必要に応じて医師の意見書など、しっかりと準備をすることが必要です。

Q 後遺障害等級の認定を受けた場合、どのような賠償を受けられますか。

大きく、①後遺症逸失利益と、②後遺障害慰謝料が認められます。

後遺症逸失利益

Q 後遺症逸失利益とは何ですか。

A 簡単に言うと、後遺症によって稼げなくなった分を金銭的に賠償してもらうことです。

Q 逸失利益はどのように計算しますか。

A 基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(但し期間そのものではなくライプニッツ係数)で計算します。

Q 具体例で教えてください。

A 例えば、男性、症状固定時に40歳、お勤め(給与所得者)、事故前の年収600万円、労働能力喪失率45%の場合

600万円×0.45×14.6430=3953万6100円となります。

※あくまで一例です。

Q 上の具体例で、67歳まで就労できたと考えるなら、67歳までの年数を乗じてほしいのですが。

A 逸失利益の賠償金は、将来稼げたはずの分を今もらうことになります。民法では1年間に5%の利息がつくと規定していますので、その利益分を調整されるのです。その結果、27年間という期間を、14.6430という係数で考えようということになるわけです。

Q 事故当時、まだ20台前半と若く、お給料が低くなっていました。将来はきっと今よりお給料が上がったはずなのですが、事故前のお給料をもとに計算されてしまうのでしょうか。

A ご質問のように若い労働者の場合には、原則として全年齢平均の賃金センサスを使うことが考えられます。つまり、事故前のお給料よりも高い基礎収入で計算できる可能性があるということです。

Q 就労可能期間はけがの内容を問わず67歳までですか。むち打ち症の場合はどうですか。

A いわゆる、むちうち症の場合、症状によりますが、12級では約10年間、14級では約5年間とされやすくなります。

Q 労働能力喪失率、労働能力喪失期間、ライプニッツ係数などよく分からず、自分で計算をするのは難しいのですが。

A どの資料を見ればよいか、労働能力喪失期間を何年と考えるのかも含め、事案によって考えていく必要もあります。一度、当事務所へお気軽にご相談ください。ご説明させていただきます。

後遺症慰謝料

Q 後遺症慰謝料とは何ですか。

A 治療を受けても後遺症が残ってしまった場合、その後遺症に対する慰謝料をいいます。これは、入通院に関する慰謝料(入通院慰謝料)とは異なり、別にもらえます。

Q 後遺症慰謝料は、いくら請求できますか。

A 相手方任意保険会社と交渉する場合、後遺障害等級によって金額も異なります。
弁護士が用いる基準の一つでは、たとえば、10級は550万円、11級は420万円、12級は290万円、13級は180万円、14級は110万円となっています(『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故センター東京支部)。1級から14級まであり、級の数字が少ないほど重度で、金額も増加します。
任意保険会社が提示する任意保険基準や、自賠責保険の自賠責基準では、これより低くなるでしょう。